VISION

改定前のWEBに掲載していた内容です。

要約

  •  柔道にはつながりを作る力があります。どこの国のどこの地域にいても、道場に所属さえすれば、世界中に豊かなつながりを作ることができる。そのようなつながりをもたらすプラットフォームを目指しています。
  • 柔道には豊かな教育資源があります。ITを活用して、稽古のプロセスでいい学びができれば、さらにいい教育となります。これからの社会に即した最先端の学びを提供できるプラットフォームを目指しています。
  • 世界中の人々がより豊かに成長できる教育システムを日本からつくること。先人が積み重ねてきた教育システムをさらに良いものにでればと考えています。

目次

  1. 課題は何か?
  2. よい学校を作る視点
    1. つながり・コミュニティ
    2. 運動
    3. 冒険
  3. 柔道に着目する理由
  4. 本プロジェクトのアプローチ
  5. 本プロジェクトが目指すもの

※末尾に本プロジェクトの趣旨を表現した動画が2本あります(90秒・12分)。


1. 課題

私たちは、人や社会が抱える様々な課題は、根本にある教育システムが良くなれば派生的に解決することができると考え、教育にフォーカスしています。

この点、OECDの研究チームは、人の能力を認知的要素(知識や情報処理能力)と非認知的要素(態度や意欲、価値観や世界観)に分けたうえで、現在の教育システムは、認知的要素を高めることはある程度できているが、非認知要素についてはほとんど高めることができていないと報告しました。

変化が速く、複雑で、異なる価値観を持つ人々が相互依存した社会、例えば、先日、米国では、現在の職業の47%は20年以外に消滅するという予測が発表されましたが、生涯にわたって新しいことを学び続け、異なる価値観を持つ人々とコラボレーションしながら働くことになる社会では、主体性やコミュニケーション能力、チャレンジ精神、熟慮する力などがますます必要となると言われています。

しかし、現在の学校では、こういった非認知的要素が大きな割合を占める能力を身につけるのは難しいと考えられているのです。

私たちは、既存の学校システムを所与の条件と考えず、次の時代に向けた新しい学校のあり方を模索する必要があります。


2.視点

ここで着目している新しい学校のあり方を考える視点、人の認知的要素や非認知的要素を高める視点は三つあります。つながりやコミュニティ、運動、冒険です。


 2-1.つながり・コミュニティ

第一の視点は、人とのつながりやコミュニティが人に与える影響についてです。

(1)つながりやコミュニティがもたらす成長

社会人であれば、仕事で必要なことを学ぶ場合、学校で勉強する場合、時として、自らの学ぶ力や成長スピードに大きな差があることを感じた経験があると思います。

何かを学ぶことが誰かに関係するとき、特に、コミュニティへの貢献に関わっていると感じるとき、私たちはよく学びます。それは、多くの場合、単なる知識やスキルの向上だけではなく、自信や価値観、考え方など、非認知的要素の成長も伴います。

大きなプロジェクトをやり遂げた新入社員がスキル的にも精神的にも一回り大きく成長したという事例はよく見られますし、家のお手伝いをよくする子供は、意欲やコミュニケーション能力や高いという研究も報告されています。

それは、今それをなぜ学ばなければならないか、という学ぶ意味が状況から明らかであるうえ、学ぶプロセスで他者との相互作用があるからだと思います。

(2)課題

しかし、近代の学校は、一人の先生が効率的にたくさんの子供を教えることができるよう、子供をコミュニティから離して一箇所に集め、子供の興味を問わず、学ぶべきことを年齢ごとに決め、一方的に提供するという側面があります。

そこでは、学ぶことと人とのつながり、コミュニティへの関わりが途切れており、なぜこれを学ばなければならないのか?、分かったら一体どうなるのか?、学ぶ意味を感じにくいのです。そして、学ぶプロセスにおいて、同じ地域の同じ年齢の集団という狭い人間関係での相互作用しかありません。

一面的な側面でしかありませんが、極端に言えば、学ぶ意味がわからないものを強制的に学ばされ、あまり人と関わることなく子供時代を過ごしてしまえば、主体性、コミュニケーション能力、チャレンジ精神など身につく余地がありません。

(3)今後の方向

したがって、これからの教育を考えた場合、多様で豊かなつながりがあるコミュニティで、多様な人と関わりながら何かをする、という機会が必要です。

単純に言うと、一人ひとりの子供が、大人になるまでに、世界各地に友達100人できていること。そのようなつながりをデザインする教育が必要だと思うのです。


  2-2. 運動

第二の視点は、運動です。

(1)運動がもたらす成長

近年、運動が脳に与える影響が徐々に明らかになり、私たちが想像する以上に大きな影響があることが分かってきました。

私たちのあらゆる活動、例えば、動くこと、考えること、感じること、笑うこと、人とコミュニケーションをとること、仕事をすること、新しいものを作り出すこと、いい人間関係をつくることなどは、脳細胞のネットワークに電気信号が流れ、よく機能することによって成り立っています。

近年の脳科学は、運動することによって、脳細胞そのものが増え、ネットワークを形成するための栄養(BDNFなど)が生まれ、ネットワークがよく機能するための潤滑油のようなもの(セロトニンなど)がバランスよく調合されることなどを明らかにしています。

その結果、注意力や記憶力、判断力、学力、IQの向上、うつ病や不安障害、ADHD、認知症の改善など、様々な側面での脳機能の向上や改善が報告されています。

(2)課題

しかし、現在、運動する子供としない子供の二極化が進行、さらに、運動する習慣が身についている成人は2,3割程度だと言われています。

例えば、うつ病患者が国内で100万以上、世界で3億人以上いるといわれていますが、運動する習慣が身についていれば、うつにならずにすんだ人が多数いるのです。生活習慣病や認知症についても同様です。

近年の脳科学が示していることは、 運動は、意欲、自尊心を高め、不安やうつを解消し、苦しみを生み出す様々な社会不適応の状態を適応に促す力がある、いわば生きる力の源泉であり、セーフティネットのようなものであるというです。

極端にいえば、現在、2,3割程度の人々しかこの源泉にアクセスできず、本当に必要な人に十分に届けられていないのです。

(3)今後の方向

これまでも運動は推進されてきましたが、身体と精神が別々だと考えられた傾向がありました。

例えば、学力や仕事の生産性、創造性と、運動は関係しない、と考えられています。受験勉強のために運動をやめた、という例はよく見られます。

しかし、近年の脳科学は、身体と精神が密接に影響し合っていることを明らかにし、学力や仕事の生産性、創造性を上げるために運動が必要であることを示しています。

他方、身体能力が高い人が高い評価を受け、そうではない人が低い評価を受けるのが既存の体育ですが、例えば、ある米国の学校では、そのような体育は運動嫌いを生み出すとしてやめたそうです。

ここでは、体育でマラソンをした場合、高い評価を受けるのは、一番早く走った人ではなく、一番高く心拍数を上げることができた人であり(心拍数が高いほうが脳の活性化をもたらすとの考え)、教育の目標が、身体だけの能力ではなく、自らの心身の健康をメンテナンスする能力(身体が精神に与える影響が加味されたもの)にシフトしているのです。

いずれにせよ、近年の脳科学の知見を生かした新しい運動・体育のあり方を模索していくことが必要です。


2-3. 冒険

新しい学校を考える第三の視点は、冒険です。

(1)冒険がもたらす成長

伝統的な社会では、子供が成熟した大人に成長できるか否かは社会の存続に関わる重大な課題であることから、大人が総出で「通過儀礼」というイベントを用意していたそうです。

そのイベントのコンセプトは、親元から離れて何らかの冒険をすることでした。まさに古来からある「かわいい子には旅をさせよ」という格言のとおり、日常の快適な世界を離れ、未知の世界に飛び込むことこそ、人間の普遍的な成長パターンだったのです。

(2)課題

近代になってから「通過儀礼」は失われました。しかし、少年ジャンプの冒険物語が多くの子供達を魅了するように、子供達は、自らの成長を促す冒険を求めていると言われています。

ただ、現在において、すべての人に適切な冒険が用意されているわけではありません。若者が非行に走るとき、それは冒険を無意識に求めて、非行という形でしか冒険が見当たらなかったという側面があるとも言われています。

(3)今後の方向

改めて、冒険がもつ価値を見直し、一人一人によくデザインされた冒険の機会を再び作ることができれば、人は大きく成長すると思うのです。


 3. 柔道

つながり・コミュニティ、運動、冒険という視点が、これからの教育において大事であることを見ましたが、このプロジェクトでは、柔道に焦点を合わせます。その理由は、以下のとおりです。

(1)つながりを生み出す力のあるコミュニケーションツールであること

他者とのつながりをデザインすることが大事なポイントだと述べましたが、柔道には、他者と一対一で触れ合うことを通じて、相手とつながりをつくることができるコミュニケーションツールとしての側面があります。

しかも、国籍や宗教、文化等の違いを乗り越えることができ、かつ言語によらずにつなありをつくることができるという非常に強力なツールです。

例えば、欧米では、伝統的に、身体を媒介にしたコミュニケーションツールとしてダンスがよく用いられており、日本から欧米にいった人の中には、言葉が話せるようになってもなかなか現地の人々とつながりを作ることは難しかったが、ダンスによってようやくつながりを築くことができたという声も聞かれます。

人とのつながりをデザインするうえで、身体を媒介とコミュニケーションは今後より注目されていくと思います。

(2)世界最大規模のコミュニティであり、かつ、豊かな多様性があること

ある特定のコミュニケーションツールを身につけたとしても、もし、狭いコミュニティ、多様性のないコミュニティの中の人々としかつながれないようであれば、豊かなつながりを作ることはできません。

この点、柔道は、国内にいると、オリンピックのときにしか注目されないマイナーな競技のように思われるかもしれませんが、世界200カ国に存する世界最大規模のコミュミニティの一つであり、かつ、国籍や宗教、貧富など関係になく属することができる豊かな多様性をもつものです。

文化や宗教の違いに起因する紛争が多発する世界において、これだけ豊かな多様性を持ったコミュニティはそれほど多くはありません。

(3)日本文化を基盤とすること

柔道は、世界に普及した日本文化の中でも最大規模のものであり、誤解を恐れずに単純化すれば、日本文化に魅力を感じて集まった人々の集団です。したがって、他のスポーツや他のコミュニティと比較して、日本という場がもつ影響力は非常に大きいものがあります。

すなわち、世界中の人々がより豊かに成長できる教育システムをつくる、という目標をかなえるうえで、柔道という教育システムは、日本が主導権を握ることができる分野なのです。

現在、日本は縮小し、国際社会におけるパワーは相対的に低下していますが、柔道を軸にして、世界中の人々がより豊かに成長できる教育システムをつくることができれば、柔道がもともともっていた日本のソフトパワーをより高めることができます。

また、あまり知られていませんが、日本人で柔道をしているという事実だけで、強弱問わず、海外の柔道コミュニティから暖かく歓迎されます。現在、日本の今後の発展のために「グローバル人材」の育成が焦点になっていますが、日本人が「グローバル人材」となる入り口として最も効果的な方法は、柔道コミュニティを通じて海外に展開していくことなのです。


4. Action

このプロジェクトでは、柔道コミュニティにおける次の課題にアプローチしていきます。

(1)つながりをつくる機会の創出

柔道はコミュニケーションツールとして強い力を持つにもかかわらず、実際に、他の柔道コミュニティとつながりをつくる機会はそれほど多くつくられてはいません。

一部の熱意ある道場や学校、団体が積極的に取り組んできましたが、大変な労力がかかるため、多くのクラブではここまで手が回らないというのが現状の状況だと推測されます。

そこで、このプロジェクトでは、コミュニティ間の行き来を冒険としてデザインし、地域の柔道クラブに属すると世界の様々な人々とつながることができる、ということをカタチにしたいと考えています。

どこの国のどこの地域にいたとしても、柔道クラブにさえ属すれば、世界各地に友達が100人できる。地域の柔道クラブが世界の窓口になってほしいと思っています。

そして、2020年の東京オリンピックもまたつながりをつくる素晴らしい機会です。この機会を生かす取り組みをしていきたいと考えています。

(2)教材・E-learningの開発

当然ながら、単に体を鍛えるだけでは優れた人材は育ちません。稽古のプロセスにおいて、指導者の指導があったり、家族や仲間、地域の人々との交流があったり、本を読んだりなど、様々なインプットやそこでの相互作用があるからこそ、優れた人材が育ちます。

柔道は、もともと知育・徳育・体育を兼ねたものとして開発されました。その知育・徳育の部分を、柔道の豊かな教育資源とITを活用して、より豊かにする教材や教育手法を開発していきたいと考えています。


 5. VISION

世界中の人々がより豊かに成長できる教育システムを日本からつくること。すでに嘉納治五郎先生から始まり無数の先人の積み重ねにより今があります。このプロジェクトではその歩みに少しでも貢献できたらと思っています。


本プロジェクトの趣旨を表現した動画もご参照ください。

柔道のポテンシャルを90秒で表現!

本プロジェクトの趣旨(12分)

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